(『季節の馬車』収録・同題第5篇)

佐藤惣之助

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月が娘らのやうに あかるい海邊で化粧してゐるときは わたしも喜んで感覺の扇をひらかう しかし思はぬ木の間に月が出たときは この村村の天然の釣ランプを しづかに眺めるにとどめよう 田舍の月はひつそりとして 淋しい人は月の祭を好ましく思ひ 古い昔の世界に遊び 幽情をつくして端坐してゐよう わたしはそこここと歩きながら 頭に幻をもてる人人にのみ この清らかな光線の帽子をあづけよう。

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