電車の隅で

千家元麿

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電車の隅で 本を讀んで居た 未だ暮れ無い光の中に 燈が柔くついた 長い夜の來る知らせを齎らして 走るやうに柔い光が自分の心を照らした 氣がつけば電車の中は混雜して走つてゐる。 初めて見る人計り立つたり、坐つたり、一杯だ 窓の外を見れば未だ日はくれない 日は落ちようとして苦悶してゐる 荒い冬の日の中に 見知らない人々が住む屋根が 恐ろしい色をして建て竝んでゐる。 苦るしい孤獨が 自分を再び夢の中へとり戻す 病氣の快復の希望を認めたやうに 柔い燈の下にてらされて自分は夢見る。

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