千家元麿

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春が來た 夜は尚夥しい霜で大地がコチ/\と凍るのに 晝間はもう全く春だ 往來には空氣も人も流れ出した 不思議な一大氣體が日に日に此の世の岸に漂着して來る。 温い湯のやうな空氣が際限も無い空の はるか遠い、遠い處から 太陽の周りから、自由自在に流れて來る 少しづゝ此世の空氣に微妙に温みを そゝいでゐるのが目に見えるやうだ。 歩いてゆくと身體に附いてゐた 騷ぎがばつたり靜まつたやうな氣がする 自然の靜かさが萬物を領す 何處までも景色と一緒に歩いて行ける 自由自在に空氣と一緒に流れてゆく。 然うして幾度も、幾度も、 自分の身の内が外の空氣の靜さを感じたり 景色の美しさに魅せられて驚きをくりかへす その度びに春だと思ふ

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