千家元麿

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暖い靜かな夕方の空を 百羽ばかりの雁が 一列になつて飛んで行く 天も地も動か無い靜かな景色の中を、不思議に默つて 同じ樣に一つ一つセツセと羽を動かして 黒い列をつくつて 靜かに音も立てずに横切つてゆく 側へ行つたら翅の音が騷がしいのだらう 息切れがして疲れて居るのもあるのだらう。 だが地上にはそれは聞えない 彼等は皆んなが默つて、心でいたはり合ひ助け合つて飛んでゆく。 前のものが後になり、後ろの者が前になり 心が心を助けて、セツセセツセと 勇ましく飛んで行く。 その中には親子もあらう、兄弟※妹も友人もあるにちがひない この空氣も柔いで靜かな風のない夕方の空を選んで、 一團になつて飛んで行く 暖い一團の心よ。 天も地も動かない靜かさの中を汝許りが動いてゆく 默つてすてきな早さで 見て居る内に通り過ぎてしまふ (一九一八、三、一一夕) (以下三篇、白樺所載)

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