貧しい母親

千家元麿

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高い煉瓦の壁の中で 赤い着物を着てゐるのを見たら 乳は上つてしまつた。乳は上つてしまつた。 乳呑兒を抱へて、四歳位になる男の子を片手につれて 貧しい母親は誰にでも饒舌る。 師走の寒い電車の中で、何も彼も棄てゝしまつたやうな目付をして。 高い煉瓦の壁の中で 赤い着物を着てゐるのを見たら 私の乳は上つてしまつた。乳が上つてしまつた。 これぽつちか出やしない。 (一九一六、一二)

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