道端で

千家元麿

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道端にベニ色の衣服を着た赤ん坊を抱いた老婆が休んで居る。 母の胎内ですつかりのびた小供の頭の髮は ところ/″\から長くのびて前へ垂れ 大きなつむりを下げて默々と地上を見詰めて動いて居る。 靜かにおとなしく、孤獨で 未だものを見る勢も無いが、彼はもう動き出しさうに見える。 よそ見してゐる老婆の手からすりぬけて行きさうに見える。 頭がだんだん垂れて行く、地上へ向つて。 その深い姿は日の目の見えぬ他界の蔭に育つたものを思はせる。 地の底を流れる河の渦まく淵から現はれたやうに暗黒で異樣だ。 そこに此世ならぬ顏がもう一つ現はれて居る。 地球が青空の中に包まれて浮んで居るやうに 見えぬ姿に包まれて半分姿を此世に現はして居る。 默々として孤獨で、つくられたまゝである。 誰もそれを見るものは無い その異樣な姿を見ると、自ら涙が湧いて來る その孤獨が自分の胸に觸れて來る。 (一〇、三)

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