白い温室

千家元麿

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自分は妻と子供と三人で まる三日間、かし家を探して歩いた。 何處にも無いのでがつかりした。 或日もう夕方近く、 三人は大きな邸の裏庭のあらはに見える道に出た。 自分は妻の疲れをいたはつて話し乍ら、 どつちへ行かうか迷つて居た、 その時ゆくり無く 自分の眼には 冬枯のさびれた裏庭の隅に 疎らな木立を透かして ガラス張りの大きな白い温室が少し靄に包れて 無人島に漂泊した人の憔衰した眼に 偶〻暗い沖を通過する白い朦朧とした汽船を見出した喜びのやうに、 靜かに暖い美の姿を現はした。 自分はびつくりしてはつきりは見なかつた。 その必要はなかつた。 幻で澤山だ。自分は再びそれを見るのが苦るしかつた 眼を反らした。 自分は妻を顧みて身顫ひをして 「仕事がしたい」と叫んだ 妻は疲れた顏をして默つて自分を見上げた 然うして二人は庭の垣に添つた道を通り過ぎた。 自分の頭には女のやうな白い温室が殘つた それは人の目に屆かない、觸れ無いところに 靜かに露骨に立つた孤獨な姿だ。 人の世を離れて安らかに生きてゐる美に包れた幸福の姿だ。 (十一月十八日)

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