太陽と櫻と月
本文の表示
太陽は一つところにとゞまつて居る
一日歩き疲れ
醉ぱらつて眞赤になつて苦し相にもう一歩も動けなくなつて
滿開の櫻の並木の上にころがつて居る。
櫻は太陽にのられて
重みに堪へ無い樣に
すばらしい勢ひを出して
充實し切つて音も立てず
一生懸命に
花に滿ちた枝に力を出し切つて居る
反對の空に太陽の沈むのを待ち切れ無くなつて
太陽の反映のやうに同じ大きさ位の月が
一直線にスラ/\と同じ位置にまで登つて
この光景に呆れて魂をぬかして居る
その間に挾れて空氣も大地も微塵も動かず
この春の終りの夕を與へて居る
皆んながもう動けなくなつて居る
太陽はころがつて火のやうな息を吹き
櫻の花はこの重い緊張に堪へやらん許りに地上に花をこぼして居る
この緊張に急に白髮になり變つたやうに
燃え盡して灰となつて今にも崩れ去るやうに
眞白くなつて
もう三分この緊張がつゞいたら
世界は如何なつて終ふかと思ふ樣に
皆んなが倒れん許りになつて
さかんに春の絶頂に達した一日の終りに
しんとして支へ合つてゐる
音も無く燃え乍ら動けなくなつてゐる。
(一九一八、三)
ログインすると、お気に入り登録や選集への追加ができます。
ログインすると、この作品に自分だけに見えるメモを残せます。
太陽と櫻と月の談話
疑問や連想、ちょっとした読み方などを気軽に話せます。
まだ投稿はありません。
太陽と櫻と月に寄せられた作品
詩から生まれた翻案・イラストや、朗読・解説などの関連リンクを持ち寄れます。
まだ投稿はありません。
批評・感想 0
作品の表現や構成を検討し、根拠を示しながら評価・講評する場所です。
まだ批評・講評はありません。
ログインすると批評・講評を書けます。