太陽と櫻と月

千家元麿

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太陽は一つところにとゞまつて居る 一日歩き疲れ 醉ぱらつて眞赤になつて苦し相にもう一歩も動けなくなつて 滿開の櫻の並木の上にころがつて居る。 櫻は太陽にのられて 重みに堪へ無い樣に すばらしい勢ひを出して 充實し切つて音も立てず 一生懸命に 花に滿ちた枝に力を出し切つて居る 反對の空に太陽の沈むのを待ち切れ無くなつて 太陽の反映のやうに同じ大きさ位の月が 一直線にスラ/\と同じ位置にまで登つて この光景に呆れて魂をぬかして居る その間に挾れて空氣も大地も微塵も動かず この春の終りの夕を與へて居る 皆んながもう動けなくなつて居る 太陽はころがつて火のやうな息を吹き 櫻の花はこの重い緊張に堪へやらん許りに地上に花をこぼして居る この緊張に急に白髮になり變つたやうに 燃え盡して灰となつて今にも崩れ去るやうに 眞白くなつて もう三分この緊張がつゞいたら 世界は如何なつて終ふかと思ふ樣に 皆んなが倒れん許りになつて さかんに春の絶頂に達した一日の終りに しんとして支へ合つてゐる 音も無く燃え乍ら動けなくなつてゐる。 (一九一八、三)

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