千家元麿

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動物園の鐵網の中で ある限りの澤山の鶴が 急に一齊に啼き立てる 何か彼等の上を目に見えぬものが掠め去つたのか 鴉でもおどろかしたのか 救ひを求めるやうに 何か知らせる如く、 急に騷がしくなつて鶴が啼く 胸の底から出る樣な聲で、怺へ切れ無い聲で 鐵網の中をいそがしく不安相に歩き廻つて 天に訴へる樣に啼く。 この騷ぎを見ると可笑しいやうだ。 何が初まつたのかと思ふ 自分達には分ら無いものが 彼等の一團には純然と見えるのではないか。 この騷ぎを聞きつけて 彼處此處から人が鐵網の周圍へ集つて來る。 かけ出して來る。 (一九一八、三月)

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