鶯
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此頃どこか近所に住んで居る鶯が裏の空地へ來ては頻りに啼く
いつもたつた一羽切りで
朝から晝過ぎまで
朝らしい氣持を失はないで
疲れもしないで啼いてゐる。
その聲を聞くといつも感心する
耳を傾けずにはゐられない
時々休んで止めては
間を置いてから落着いてゆつくりと
沈默の中から自ら開けて來る樣に
奧深いところで靜かに啼き初める。
恥しいのでうぶな姿を茂みに潜ませて
聞き手が沈默してゐるのを知つてゐる樣に啼き出す
耳の故かも知れないが
啼き初める時の二言三言は未だ少し下手だ。
然しすぐ調子を張りあげる。
もう誇をもつて啼く、臆した心が消えてゆく
夢中になる。止めるかと思ふと長くつゞけたりする
短いけれど複雜な歌をうたふ
枝の上から身を逆まにして落ちて來る樣に啼いたり間を打つて、
沈んだやうに嘆いたり
自由自在に心のゆくまゝにやつては止める
朗らかに歌ひ終る
まつたく天品だ。
「鶯は人を喜ばせる爲めに啼いてゐるのですよ」
と俺の妻が分のわからない小供に話してゐる。本當だ、
今に俺の詩もさうなるよと俺は思ふ
鶯よ、御前は飽きもしないで、同じ事をくりかへして居る
朝から少しも疲れもせずに、日の永い一日、
内氣なお前は姿も見せずに
大きな自然の中で
靜かさを一杯身の内に吸ひ込んで
氣が向くと、休んでは心をこめて歌ひ出す
未だそこにゐたのかと思ふ。
一日一日御前の聲は美くしくなる
一日一日調和して來る春景色の中で
御前の聲は強くなる。勵んで來る
だん/\自信がついて來る。
いつも勉強な鶯よ、
御前は短い春をあせりもしないで毎日根氣よく
同じ事をうたつてゐるね。
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