若い母

千家元麿

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若い娘がこの頃生れた許りの 赤ん坊を脊負つて 買ひ物に澤山出た女の中に交つて歩いて居る 彼女はこの新らしい經驗を恥かし相に顏に現はす程 喜んで居る 彼女の笑ひには得意と羞恥があらはれて居る 彼女は木綿の小さつぱりした娘々しい着物を着て 赤ん坊にも贅澤になら無い愛の籠つた新しい着物を着せて居る。 彼女の夫は役所にでも行つて居るのだらう 彼女はまるで喜びに壓倒されて歩いて居る 彼女の前に全世界はどんなに輝いて居るだらう 彼女の心はどんなに賑つて居るだらう 彼女は手柄をしたのだ。 涙ぐみたい程愛の激情に彼女は迫られて居るのだ、 見るものが何も彼も新しく見えるのだ、 見よ若き母が隱し得無い喜びに輝きつゝ 赤ん坊を脊負つて買物に歩むのを その素直の姿の娘らしいつゝましさを その質素な姿の美くしさを。

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