香のささやき(『泣菫詩抄』収録)

薄田泣菫

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この夕ぐれの靜けさに、 魂はしのびに息づきて、 何とはなしにおもひでに 二つの花の香を嗅ぎぬ。 ひとつは、濕める梔子の 別れのゆふべ泣き濡れし あえかの胸に、今もはた 「日」は殘らめとささやきつ。 ひとつは、薫ゆる野茨の 今は末枯れぬ、そこにして また新しき「日」は芽ぐみ、 花もぞ咲くとつぶやきつ。

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