村娘

薄田泣菫

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春ゆく夕、白藤の 花ちる蔭に身をよせて、 泣くは行末、さだめなき 世のならはしを思ふもの。 知らじや、薄き花びらに 春の日を燒く香あり。 見じや、か細き鬢莖に かなへをあぐる力あり。 路いそぎゆく旅の人、 しばし木暗に立ちよりて、 冷たき胸を叩く手に、 など若き身を抱かざる。 誰に語らん、和肌に 指をさはればうとましや、 潮に似たる胸の氣の 浪とゆらぐを今ぞ知る。 春經てさぶる酒甕には、 色濃き酒の湧くものを、 痩せし腕に血も冷えて、 苦き涙をぬぐふかな。 夏きてまたも新らしく 薄ら衣服を裁ちきれど、 もろき命をおもひみて、 たたむに惜しき染小袖。 神よ情ある人の子に、 盲目をゆるせ、ゆく春の 長きうれひを眺めては、 か弱き胸の堪へざるに。

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