零餘子

薄田泣菫

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片びなた、醜家のかくれ、 莿だかの老木にそひて、 頂がけり、蔓の手たゆき 零餘子かづら。 八少女の野の使ひ女に、 身ぞひとり、ささやけ者や、 葉がくれに、ああ聊かの 實こそむすべ。 熟色の黄金覆盆子は、 そら聖、あかづら鶫、 ひと日來て、啄ばみ去りぬ、 醉のすさび。 核ぐみし茱萸は、端山の まめをとこ、栗鼠か拾ひて、 小甕酒釀みもこそすれ、 洞窟ふかに。 似ず、ひとり莖葉のしたに、 (隱り戀、人こそ知らね、) 實はむすび、實はまた熟えて、 蔓もたわに。 つむじ風、した葉の煽り、 あたふたと零餘子はこぼる。 ああ不祥、――莿高珠數の 珠のみだれ。 實は、さあれ底土にひそみ、 日にめざめ、濕りに吹呿び、 いつかまた芽生を伸して、 二代ゆかめ。 身ぞ小野の矮人ながら、 あけぼのの映、またありし 夕ながめ、見こそ醉ひしか、 數多がへり。 身の程のいささけ業に、 許されの性は足ひぬ。 ああ熟實、――わが世は落ちて またかへらじ。 秋収め、野田のせはしさ、 敝履のはためきや、――いま、 せつなさの噞喁ゆるに、 葉こそ喘げ。

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