三の百合

薄田泣菫

タグを編集・提案

作品の主題・モチーフなど、対象に固有の情報を登録してください。年代・形式・表記・文学運動などの共通分類は登録できません。会員タグの追加と、正式タグの削除は、5人の支持で自動反映されます。

ログインするとタグの追加・削除を提案できます。

やをれ、此方樣、初夏の 永い日なかを何處へ徃こ、 ぬるむ小河の水こえて、 向うお山へ花折りに。 花は何ぐさ、山の百合、 瑞枝しだれた秦木皮の 蔭にひともと手折りては、 知らぬ『往時』にたてまつり。 深山頬白鳴きかへる 十六夜薔薇の葉がくれに、 またもひと本見出しては、 『今日』を祝ひの花の環に。 一はかざしに、二は胸に、 さては御手に、『ゆくすゑ』の あらまし事の願ひにと、 參らす花のあらばよい。 あかつき露のうは濕り、 まだ乾ぬ森のした路を、 眞保良の奧にわけいれば、 深山がくれの戸が見ゆる。 『夏野の姫に物まうす、 牧のをとめに、ひと莖の 花を。』と門をそたたけば、 からりと開いた闇の宮。 宮の閾のかたかげに、 白よそほひの立すがた、 えならぬ香にも仄めいて、 咲いた、あえかの山の百合。 姫が御賜の花やとて、 心いそいそ寄るとすりゃ、 思ひもかけぬ尾鳴しの 蛇が見えそろ、葉がくれに。 花は折りたし、蝮の 葉守のまみは見憂いし、 淺野に百合は咲くまいに、 何を樣にはまゐらさう。 ついと強往く手さきに、 蛇はぬる火のかつ消えて、 闇のあなたに、ほのぼのの 花や、――と見れば夢わいな、 山毛欅の瑞枝の下蔭で、 樣にもたれて眞白百合、 一はかざしに、二は胸に、 三は御手の手のひらに。

ログインすると、この作品に自分だけに見えるメモを残せます。

批評・感想 0

作品から読み取ったことや、自分の中に生まれた感覚をまとまった文章で残す場所です。

まだ解釈・感想はありません。

三の百合の談話

疑問や連想、ちょっとした読み方などを気軽に話せます。

まだ投稿はありません。

話題を投稿する

三の百合に寄せられた作品

詩から生まれた翻案・イラストや、朗読・解説などの関連リンクを持ち寄れます。

まだ投稿はありません。

この詩に作品を寄せる