破甕の賦

薄田泣菫

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火の氣も絶えし廚に、 古き甕は碎けたり。 人のかこつ肌寒を 甕の身にも感ずるや。 古き甕は碎けたり、 また顏圓き童女の 白き腕に卷かれて、 行かめや、森の泉に。 くだけ散れる片われに、 窓より落つる光の 靜かに這ふを眺めて、 獨り思ひに耽りぬ。 渇く日誰か汝を 花の園にも交へめや。 くちびる燃ゆる折々、 掬みしは吾が生命なり。 清きものの脆かるは、 いにしへ人に聞きにき。 汝はた清かりき、 古き甕は碎けたり。 ああ土よりいでし人、 清き路を踏みし人、 そらの上を慕ふ人、 運命甕に似ざるや。 古き甕は碎けたり、 壞片を手に拾ひて、 心憂ひにえ堪へず、 暮れゆく日をも忘れぬ。

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