夢ざめしをり

薄田泣菫

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夢ざめつ、――今はた聞きね、 眞白げの眠りの退羽、 羽ぶきゆくを。 夢か、――さは、わが世の刈野、 片日向、小春日和の 日かげぬるに。 過ぎ去りし日の事榮は、 刈株の芽生を伸して、 花こそ咲け。 花よ、黄のかをりに蒸して、 遶佛や、童すがりの 一は、『歸依』に。 花よ、火の雫に燃えて、 下こがれ、葉がくれ朽ちし 『戀』は、朱に。 あるは、葉の煽りのひまに、 しら笑ひ、――似非方人や、 『幸』の白み。 あるは、眼のまなじり濕み、 うなだるる面ざし、妖の 『才』の青み。 また、蔭に蜘網弛みて、 『過去』や、足高蜘蛛の 冷えし死骸。 葉の緑、ふとこそ萎えて、 しをれゆく、――わが世は鈍の 藤衣の窶れ。 青びるる身よ、朽尼の 老ほけて、見入るしばしを、 魂も瘠せぬ。 鈍の色、ややに薄れて、 初びかり、――ああ曙や、 目こそさむれ。 明けわたる光の野こそ、 『當來』や、わが新身の 嚴の眞屋に。 初びかり、げに常春の かなた見て、躍りぬ、胸の 聖ごころ。

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