荒磯

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ほの暗い暁の 目ざめはおれに おれの誕生を思わせる 祝福されない誕生を 喜ばれない 迎えられない 私生子の ひっそりとした誕生 死ぬときも ひとしくひっそりと この世を去ろう 妻ひとりに静かにみとられて だがしーんとしたそのとき 海が岸に身を打ちつけて くだける波で おれの死を悲しんでくれるだろう おれは荒磯の生れなのだ おれが生れた冬の朝 黒い日本海ははげしく荒れていたのだ 怒濤に雪が横なぐりに吹きつけていたのだ おれが死ぬときもきっと どどんどどんととどろく波音が おれの誕生のときと同じように おれの枕もとを訪れてくれるのだ Ⅲ  自宅に帰ってからの詩である。はじめはベッドに寝たきりだったが、だんだん庭に出たり近くを散歩するようになった。気持や考えもすこしずつまた変ってきた。一方、心境の明暗の度合いのはげしくなったところもあり、自己から離れた詩の書ける時もあった。  安東次男は詩は老年の文学であると書いていた。私にとって詩は正に老年の文学である。私の詩の実際は、安東次男の言う老年の文学とは違うかもしれぬが、詩が青春の文学だけでないのは、私のためにも詩のためにも仕合わせである。  ごく若い頃に私も詩を書いたが、小説を書きはじめるようになってから、ふっつりやめた。散文精神に有害であり有毒であると思ったからだが、やがてその間違いに気づき四十になってからふたたび自己流の詩作に戻り、今日に至っている。正に老年の文学である。

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