夜の水
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くらい夜の水の
静かな表面が
にわかに泡立ち
眼前の一点がもくもくとふくれあがる
明らかにそれは怒っているのだ
闇のなかで黒く光りながら
水は激怒している
鬱積した悲しみが
遂に怒りになったのだ
しかしそれもながくはつづかないのだ
怒りは無慙に崩され
水の高まりが次第に衰える
渦はあえなく消え去って
前にも増しておだやかな表面になる
見ている私に悲しみがどっと
波のように迫ってくるのはこの時だ
生と死とをそれは思わせる
ほんとうの悲しみとはどういうものかが
私に知らされるのも正にこの時だ
怒りのごとくにくだかれる生よ
そのもろさと短かさと激しさ
くらい夜の水よ
死もまたかくのごときか
(七里ヶ浜K病院で)
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