吹雪の夜の独白

高村光太郎

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外では吹雪が荒れくるふ。 かういふ夜には鼠も来ず、 部落は遠くねしづまつて 人つ子ひとり山には居ない。 囲炉裏に大きな根つ子を投じて みごとな大きな火を燃やす。 六十七年といふ生理の故に 今ではよほどらくだと思ふ。 あの欲情のあるかぎり、 ほんとの為事は苦しいな。 美術といふ為事の奥は さういふ非情を要求するのだ。 まるでなければ話にならぬし、 よくよく知つて今は無いといふのがいい。 かりに智恵子が今出てきても 大いにはしやいで笑ふだけだろ。 きびしい非情の内側から あるともなしに匂ふものが あの神韻といふやつだろ。 老いぼれでは困るがね。 昭和二四・一〇

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