燧玉

上田敏

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悔といふ燧玉、手にとりて 過ぎし日を其下に照らしてみれば、 内證のかくれたる色青き 底の上に、うるはしき花は浮ぶ。 その玉の照らしたるわが願、 その願、つらぬけるわが心、 その心、思出に近づけば、 忽ちに枯草はもえあがる。 このたびは思をと、かの玉に 窺へば、晶玉のつとひかり、 忘れたる悲の花びらは、 ほのぼのとおもむろに咲きにほふ。 記憶にはあともなく消えはてし ありし夜のことわざも歸り來て、 なよげなる毳をもて撫でらるる 新しき望あるわが心。

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