火宅

上田敏

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嗚呼、爛壞せる黄金の毒に中りし大都會、 石は叫び烟舞ひのぼり、 驕慢の圓葢よ、塔よ、直立の石柱よ、 虚空は震ひ、勞役のたぎち沸くを、 好むや、汝、この大畏怖を、叫喚を、 あはれ旅人、 悲みて夢うつら離りて行くか、濁世を、 つゝむ火焔の帶の停車場。 中空の山けたたまし跳り過ぐる火輪の響。 なが胸を焦す早鐘、陰々と、とよもす音も、 この夕、都會に打ちぬ。炎上の焔、赤々、 千萬の火粉の光、うちつけに面を照らし、 聲黒きわめき、さけびは、妄執の心の矢聲。 滿身すべて涜聖の言葉に捩れ、 意志あへなくも狂瀾にのまれをはんぬ。 實に自らを誇りつゝ、將、詛ひぬる、あはれ、人の世。

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