小曲

上田敏

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小曲は刹那をとむる銘文、また譬ふれば、 過ぎにしも過ぎせぬ過ぎしひと時に、劫の「心」の 捧げたる願文にこそ。光り匂ふ法の會のため、 祥もなき預言のため、折からのけぢめはあれど、 例も例も堰きあへぬ思豐かにて切にあらなむ。 「日」の歌は象牙にけづり、「夜」の歌は黒檀に彫り、 頭なる華のかざしは輝きて、阿古屋の珠と、 照りわたるきらびの榮の﨟たさを「時」に示せよ。 小曲は古泉の如く、そが表、心あらはる、 うらがねをいづれの力しろすとも。あるは「命」の 威力あるもとめの貢、あるはまた貴に妙なる 「戀」の供奉にかづけの纏頭と贈らむも、よし遮莫、 三瀬川、船はて處、陰暗き伊吹の風に、 「死」に拂ふ渡のしろと、船人の掌にとらさむも。

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