青空に圍まれた地球の頂點に立つて

山之口貘

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おさがりなのである 衣類も食物類も住所類もおさがりなのである よくも掻き集めて來たいろいろのおさがり物なのである ついでに言ふが 女房といふ物だけはおさがり物さへないのである 中古の衣食住にくるまつて蓑虫のやうになつてはゐても 欲しいものは私もほんたうに欲しいのである まつしぐらに地べたを貫いて地球の中心をめがける垂直のやうに 私の姿勢は一匹の女を狙つてゐるのである 引力のやうな情熱にひつたくられてゐるのである ひつたくられて胸も張り裂けて手足は力だらけになつて 女房女房と叫んでゐるので唇が千切れ飛んでしまふのである 妻帶したら私は 女房の足首を掴んでその一塊の體重を肩に擔ぎあげたいのである 機關車・電車・ビルデイング・煙突など 街の體格達と立ち並んで汗を拭き拭き私は人生をひとまわりしたいのである 青空に圍まれた地球の頂點に立つて みるみる妻帶する私になつて兵卒の禮儀作法よりももつとすばやくはつきりと 『これは女房であります』と言つてしまつて この全身を私は男になり切りたいのである

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