桃の木

山之口貘

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時間 時間になると 爺さんごはんです 婆さんごはんですとこえがかかり ふたりの膝元にはそれぞれの 古びた膳が運ばれて来るのだ 膳はいつもとぼけていた 米のごはんの外にも 思想の自由 言論の自由というような あぷれげえるとかものっかってはいるのだが なんのかんのと言えばすぐにも だまって食ってろとやられる仕組みの 配給だけがのっかっているのだ 爺さん婆さんはだまって その日その日の膳にむかい どこまで生きるかを試めされているみたいに 配給をこづいてはそれを食うのだ ある日の朝のことなのだ 膳になるにはまだ早かった 庭には桃の花が咲いていた 爺さんも婆さんも庭へおりると 腰の曲りをのばしたりしていたのだが 天に向って欠伸をした

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