土地〈2〉

山之口貘

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東に柿の木 西には樫の木 南は栗の木まじりの松林 北から東へかけて竹林 竹林を背にしてそこに 古ぼけたトタンの屋根をかむって 首をかしげてたたずんでいる家 ここがぼくらの疎開先で 女房の里の家なのだ 奥のくらがりにいた老婆が 腰をあげて縁側に出て来たのだが よく来たなあと歯のない口を開けた 女房の妹によく似た顔だ 老婆は両手をさしのべながら 女房の背中の赤ん坊に言った どれどれこのやろ 来たのかこのやろと言った

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