夢の後
本文の表示
飯を食べてゐるところで眼が開いてしまふた 鼻先には朝が來合はせてゐる 顏の重みで草が倒れてゐる 昨夜 置きつ放しの足が 手が 胴體が 亂雜してゐる 疲勞の重さで僕の寢てゐるところの土が窪んでゐる それらの肉體を 熊手のやうに僕は一ヶ所に掻き寄せる 僕は僕を一纏めにすると さて 立ち上らうとするんだがよろめいてしまふ よろめくたびの僕にゆすぶられて そこに朝が綻びかけてゐる
この情景を隙見してゐるやうに 僕は飯を食つてゐたんだが と僕はおもふ
夢にくすぐられて からまはりしてゐる生理作用 生活のなかには僕がゐない 僕は死んでしまつたかのやうに 月日の上をうろついてゐる
『このごろはどうしてゐるんだ?』
ああこのごろか! このごろもまた僕はひもじいのである
だから借して呉れ
『ないんだ』と聲が言つた
あんまり度々なんだから あるにしてもないんだらう
僕は ガードの上の電車に眼を投げる 眼は電信柱の尖端にひつかかる 往來の頭達の上に眼が落ちる この邊も賑やかになつたもんだが 眼は僕の上に落ちる 食べ易いのであらうか よくも情類のやうなやはらかいものばかりを僕は食べて歩いてゐるもんだ
つんぼのやうになつて 僕のゐる風景を目讀してゐると 誰かが 僕の肩を叩いてゐる
『空腹になるのがうまくなつたんだらう』
ログインすると、お気に入り登録や選集への追加ができます。
ログインすると、この作品に自分だけに見えるメモを残せます。
夢の後の談話
疑問や連想、ちょっとした読み方などを気軽に話せます。
まだ投稿はありません。
夢の後に寄せられた作品
詩から生まれた翻案・イラストや、朗読・解説などの関連リンクを持ち寄れます。
まだ投稿はありません。
批評・感想 0
作品の表現や構成を検討し、根拠を示しながら評価・講評する場所です。
まだ批評・講評はありません。
ログインすると批評・講評を書けます。