富士を仰ぎて
本文の表示
大野の極み草枯れて
火は燃え易くなりにけり
水せゝらがず鳥啼かず
動くは低き煙のみ
落日力弱くして
森の木の間にかゝれども
靜にうつる空の色
翠はやゝに淡くして
八雲うするゝ南に
漂ふ塵のをさまりて
雪の冠を戴ける
富士の高根はあらはれぬ
返らぬ浪に影見えて
櫻は川に匂ふらむ
霞みそめたる天地に
遍きものは光かな
涙こほりし胸の上に
閉じたる花も咲かんとして
亡びんとせしわが靈の
今こそ蘇きて新しき
人は旅より歸るとき
花なる妻を門に見む
わが見るものは風荒ぶ
土橋の爪の枯柳
人は旅路に出るとき
美し人を※楉に見む
わが行く路に在るものは
やみを封めたる穴にして
筑波の山に居る雲の
葉山繁山おほへるも
春は蝶飛ぶ花園に
立つべき足の痿へたるを
やゝともすれば雲の奧に
かくれんとするいとし兒を
悲む母のふところに
退かせじとする枷にして
千代もとわれは祈れども
母は子故に死なんといふ
世に一人なる母をおきて
わが有つものは
有らじと思ふに
ログインすると、お気に入り登録や選集への追加ができます。
ログインすると、この作品に自分だけに見えるメモを残せます。
富士を仰ぎての談話
疑問や連想、ちょっとした読み方などを気軽に話せます。
まだ投稿はありません。
富士を仰ぎてに寄せられた作品
詩から生まれた翻案・イラストや、朗読・解説などの関連リンクを持ち寄れます。
まだ投稿はありません。
批評・感想 0
作品から読み取ったことや、自分の中に生まれた感覚をまとまった文章で残す場所です。
まだ解釈・感想はありません。
ログインすると解釈・感想を書けます。