秋の夜の歌
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時計を見れば十一時、
秋の夜長の嬉しさよ、
筆さしおきて、また更に
己が時ぞと胸をどる。
立ちつつ棚の本を抽く。
夜更けて物を読むことは、
田を刈る人が手を止めて
しばらく空を見るよりも
更に澄み入る心なれ。
一のペイヂをそつと切る。
今夜新たに読む本は
未知の世界の旅ぞかし。
初めの程は著者とわれ
少し離れて行くも好し。
敬ふごとく次を切る。
唯だ打黙し読むことを
もどかしとする虫ならん、
我れに代りて爽かに
前の廊より声立てぬ。
電灯のいろ水に似る。
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