或年の夏
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米の値の例なくも昂りければ、
わが貧しき十人の家族は麦を食らふ。
わが子らは麦を嫌ひて
「お米の御飯を」と叫べり。
麦を粟に、また小豆に改むれど、
猶わが子らは「お米の御飯を」と叫べり。
わが子らを何と叱らん、
わかき母も心には米を好めば。
「部下の遺族をして
窮する者無からしめ給はんことを。
わが念頭に掛かるもの是れのみ」と、
佐久間大尉の遺書を思ひて、
今更にこころ咽ばるる。
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