朝晴雪(『晶子詩篇全集拾遺』収録・同題第2篇)
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おお、此処に、
躍りつつ、
歌ひつつ、
急ぐ女の一むれ……
時は朝、
地は雪の原。
急ぐ女の一むれ、
青白き雪の上を
真一文字に北へ向き、
風に逆ふ髪は
後ろに靡きて
大馬の鬣の如く、
折からの日光を受けて
金色に染まりぬ。
高く前に張れる両手は
確かに掴まんとする
理想の憧れに慄へて
槍の穂の如くに輝き、
優しの素足に
さくさくと雪を蹴りつつ、
甲斐甲斐しくも穿きたるは
希臘風の草鞋……
さて桔梗色や
淡紅色の
明るき衣
霧よりも軽く
膝を越えて
つつましやかに靡けば、
女達の身は半
浮ぶとぞ見ゆる。
この美くしき行列は
断えず歌へり。
その節は
かすかに軽き
快き眩暈の中に
人と万物を誘ひ、
人には平和を、
木草には花を感ぜしむ。
女達は歌ひつつ行く。
「全世界を恋人とし、
いとし子として、
この温かき胸に抱かん。
我等は愛の故郷――
かの太陽より来りぬ」と。
おお、此処に、
踊りつつ、
歌ひつつ、
急ぐ女の一むれ……
女達の踏む所に
紅水晶の色の香水
光の如くに降り注ぎ、
雪の上に一すぢ
春の路は虹の如く
ほのぼのとして現れぬ。
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