暑き日の午前

与謝野晶子

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暑し、暑し、 曇りたる日の温気は 油障子の中にある如し。 狭き書斎に陳べたる 十鉢の朝顔の花は 早くも我に先立ちて※を感じ、 友禅の小切の 濡れて撓める如く、 また、書きさして裂きて丸めし 或時の恋の反古の如く、 はかなく、いたましく、 みすぼらしく打萎れぬ。 暑し、暑し、 机の蔭よりは 小く憎き吸血魔 藪蚊こそ現れて、 膝を、足を、刺し初む。 されど、アウギユストは元気にて 彼方の縁に水鉄砲を弄り、 健はすやすやと 枕蚊帳の中に眠れり。 この隙に、君よ、 筆を擱きて、 浴びたまはずや、水を。 たた、たたと落つる 水道の水は細けれど、 その水音に、昨日、 ふと我は偲びき、 サン・クルウの森の噴水。

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