古巣より

与謝野晶子

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空の嵐よ、呼ぶ勿れ、 山を傾け、野を砕き、 所定めず行くことは 地に住むわれに堪へ難し。 野の花の香よ、呼ぶ勿れ、 若し花の香となるならば われは刹那を香らせて やがて跡なく消えはてん。 木の間の鳥よ、呼ぶ勿れ、 汝れは固より羽ありて 枝より枝に遊びつつ、 花より花に歌ふなり。 すべての物よ、呼ぶ勿れ、 われは変らぬ囁きを 乏しき声にくり返し 初恋の巣にとどまりぬ。

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