初夏

与謝野晶子

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初夏が来た、初夏は 髪をきれいに梳き分けた 十六七の美少年。 さくら色した肉附に、 ようも似合うた詰襟の みどりの上衣、しろづぼん。 初夏が来た、初夏は 青い焔を沸き立たす 南の海の精であろ。 きやしやな前歯に麦の茎 ちよいと噛み切り吹く笛も つつみ難ない火の調子。 初夏が来た、初夏は ほそいづぼんに、赤い靴、 杖を振り振り駆けて来た。 そよろと匂ふ追風に、 枳殻の若芽、けしの花、 青梅の実も身をゆする。 初夏が来た、初夏は 五行ばかりの新しい 恋の小唄をくちずさみ、 女の呼吸のする窓へ、 物を思へど、蒼白い 百合の陰翳をば投げに来た。

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