海峡の朝

与謝野晶子

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十一月の海の上を通る 快い朝方の風がある。 それに乗つて海峡を越える 無数の桃色の帆、金色の帆、 皆、朝日を一ぱいに受けてゐる。 わたしはたつた一人 浜の草原に蹲踞んで、 翡翠色の海峡に あとから、あとからと浮出して来る 船の帆の花片に眺め入る。 わたしの周囲には、 草が狐色の毛氈を拡げ、 中には、灌木の 銀の綿帽子を著けた杪や 牡丹色の茎が光る。 後ろの方では、 何処の街の工場か、 遠い所で一しきり、 甘えるやうな汽笛の音が 長い金属の線を空に引く。

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