郊外(『晶子詩篇全集』収録)
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けたたましく
私を喚んだ百舌は何処か。
私は筆を擱いて門を出た。
思はず五六町を歩いて、
今丘の上に来た。
見渡す野のはてに
青く晴れた山、
日を薄桃色に受けた山、
白い雲から抜け出して
更に天を望む山。
今朝の空はコバルトに
少し白を交ぜて濡れ、
その下の稲田は
黄金の総で埋まり、
何処にも広がる太陽の笑顔。
そよ風も悦びを堪へかね、
その静かな足取を
急に踊りの振に換へて、
またしても円く大きく
芒の原を滑べる。
縦横の路は
幾すぢの銀を野に引き、
或ものは森の彼方に隠れ、
或ものは近き村の口から
荷馬車と共に出て来る。
ああ野は秋の最中、
胸一ぱいに空気を吸へば、
人を清く健やかにする
黒土の香、草の香、
穀物の香、水の香。
私はじつと
其等の香の中に浸る。
またやがて浸ると云はう、
爽やかに美しい大自然の
悠久の中に。
此の小さい私の感激を
人の言葉に代へて云ふ者は、
私の側に立つて
紅い涙を著けたやうな
ひとむらの犬蓼の花。
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