古簾
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今年も取出して掛ける、
地震の夏の古い簾。
あの時、皆が逃げ出したあとに
この簾は掛かつてゐた。
誰れがおまへを気にしよう、
置き去りにされ、
家と一所に揺れ、
風下の火事の煙を浴びながら。
もし私の家も焼けてゐたら、
簾よ、おまへが
第一の犠牲となつたであらう。
三日目に家に入つた私が
蘇生の喜びに胸を躍らせ、
さらさらと簾を巻いて、
二階から見上げた空の
大きさ、青さ、みづみづしさ。
簾は古く汚れてゐる、
その糸は切れかけてゐる。
でも、なつかしい簾よ、
共に災厄をのがれた簾よ、
おまへを手づから巻くたびに、
新しい感謝が
四年前の九月のやうに沸く。
おまへも私も生きてゐる。
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