小鳥の巣(『晶子詩篇全集拾遺』収録・同題第2篇)

与謝野晶子

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何と云ふ小鳥の巣ならん、 うす赤き幹の 枝三つ斜めして並べるに、 枯れし小枝と、苔と、 すすきの穂とを組みて、 二寸の高さにまろく、 満月の形したり。 巣のある木を 更に上より傘したるは 方三丈の大樹、 などか小鳥は その黒樺をえらばずして、 きやしやなる幹の 沙羅の枝に住みつらん。 小鳥の巣、 今は既に空ろなり、 ここにて孵しし雛と共に その親鳥の飛び去れるは何処ぞ。 谷の風吹きのぼるたびに 熊笹、山の林の奥にまで浪打ち、 前には遠き連山に八月の雪あり。 小鳥の巣、 幸ひあれよ、 その飛び去れる小鳥らに。 我れもまた今日は旅びと、 恐らく、東京の我が家をも この巣の如くさし覗きて、 我が旅のために祈る友あらん。

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