紅梅

与謝野晶子

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おお、ひと枝の 花屋の荷のうへの 紅梅の花、 薄暗い長屋の隅で ポウブルな母と娘が つぎ貼りした障子の中の 冬の明りに、 うつむいて言葉すくなく、 わづかな帛片と 糊と、鋏と、木の枝と、 青ざめた指とを用ひて、 手細工に造つた花と云はうか。 いぢらしい花よ、 涙と人工との 羽二重の赤玉を綴つた花よ、 わたしは悲しい程そなたを好く。 なぜと云ふなら、 そなたの中に私がある、 私の中にそなたがある。 そなたと私とは 厳寒と北風とに曝されて、 あの三月に先だち、 怖る怖る笑つてゐる。

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