曲馬の馬

与謝野晶子

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競馬の馬の打勝たんとする鋭さならで 曲馬の馬は我を棄てし 服従の素速き気転なり。 曲馬の馬の痩せたるは、 競馬の馬の逞しく美くしき優形と異なりぬ。 常に飢じきが為め。 競馬の馬もいと稀に鞭を受く。 されど寧ろ求めて鞭打たれ、その刺戟に跳る。 曲馬の馬の爛れて癒ゆる間なき打傷と何れぞ。 競馬の馬と、曲馬の馬と、 偶ま市の大通に行き会ひし時、 競馬の馬はその同族の堕落を見て涙ぐみぬ。 曲馬の馬は泣くべき暇も無し、 慳貪なる黒奴の曲馬師は 広告のため、楽隊の囃しに伴れて彼を歩ませぬ……

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