〔無題〕(『晶子詩篇全集拾遺』収録・同題第103篇)

与謝野晶子

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都の中の神田にも、 丑三つ時のあることを、 病みて知れるにあらねども、 声の無きこそ哀れなれ。 しとどの汗のうちに覚め、 そこはかとなく明りさす 室の広きを見渡せば、 昼の二三の顔浮ぶ。 病めば思ひも多からで、 同じ筋のみたどられぬ。 生死の覚悟身に沁まず、 我がこととなくよそよそし。 小床と向ふ垂幕に、 伊豆の入江の烏賊船の、 いさり火模様描くものは、 下谷浅草本所の火。 短夜なれば既にして、 外を通へる風の音、 明けん朝に関心を、 もち初めしよと我れは聞く。

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