〔無題〕(『晶子詩篇全集拾遺』収録・同題第28篇)

与謝野晶子

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若い娘の言ふことに、 「雲雀よ、雲雀、 そなたは空で誰を喚ぶ。 ――それは何うでもよいわいな。 わたしは君の名をば喚ぶ。 昼は百たび、 夜は二百たび。」 若い娘の言ふことに、 「あれ、あの青い 空であらうか、君の名は。 ――それに違ひがないわいな。 ひとり小声で喚ぶたびに、 沈んだ心も、 しんぞ高くなる。」 若い娘の言ふことに、 「また、あの燃える お日様である、君が名は。 ――さうではないと誰が言はう。 わたしの心を眩暈させ、 熱い吐息を 投げぬ間もない。」 若い娘の言ふことに、 「ああ、君が名を 喚ぶと云うても口の中。 ――それを何うして君が知ろ。 自分の喚んで聴くばかり。 雲雀よ、雲雀、 音の高い雲雀。」

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