〔無題〕(『晶子詩篇全集拾遺』収録・同題第29篇)

与謝野晶子

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わたしの上を掠めて通らぬ雲ならば、 勝手に曇れ、 勝手に渦巻け、 わたしの足もとの遠い雲。 憎悪の風に、 愚痴のしぶき雨、 嘲りの霞をまじへた、 低い、低い、通り雲。 わたしの上には、水色の ひろい空、日輪の金の点。 けれど、なんだか気に掛る。 あれ、あの地平線に見えるのは、 不安な、黒い雲の羽。 それとも、わたしに二度帰る 空飛ぶ馬の持つ羽か。 けれど、なんだか気に掛る。

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