西部利亜所見
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汽車は吼ゆ。
されどシベリヤの
雪と氷の原を行く汽車は
胴体こそ巨大の象のやうなれ、
この怪獣は石炭の餌を与へられず、
薪のみを食らへば、
吼ゆる声の力無く、
のろのろと膝行りゆく。
露西亜文字を読み得ざれば、
今停まれるは何と云ふ駅か知らず。
荒野の中の小き停車場に
人の乗降も無く、
落葉したる白楊の木
其処此処に聳えて、
灰色の低き空の下
五月の風猶雪を散らせり。
汽笛の叫びに引かれて、
男、女、子供、
すべて靴を穿かぬ
シベリヤの農民等は
手に手に、大なる雁を、
鶏を、牛乳を捧げて、
汽車の窓に馳せ寄り、
かしましく買へと云ひぬ。
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