坂本紅蓮洞さん

与謝野晶子

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わが知れる一柱の神の御名を讃へまつる。 あはれ欠けざることなき「孤独清貧」の御霊、 ぐれんどうの命よ。 ぐれんどうの命にも著け給ふ衣あり。 よれよれの皺の波、酒染の雲、 煙草の焼痕の霰模様。 もとより痩せに痩せ給へば 衣を透して乾物の如く骨だちぬ。 背丈の高きは冬の老木のむきだしなるが如し。 ぐれんどうの命の顳顬は音楽なり、 断えず不思議なる何事かを弾きぬ。 どす黒く青き筋肉の蛇の節廻し……… わが知れる芸術家の集りて、 女と酒とのある処、 ぐれんどうの命必ず暴風の如く来りて罵り給ふ。 何処より来給ふや、知り難し、 一所不住の神なり、 きちがひ茄子の夢の如く過ぎ給ふ神なり。 ぐれんどうの命の御言葉の荒さよ。 人皆その眷属の如くないがしろに呼ばれながら、 猶この神と笑ひ興ずることを喜びぬ。

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