戦争

与謝野晶子

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大錯誤の時が来た、 赤い恐怖の時が来た、 野蛮が濶い羽を伸し、 文明人が一斉に 食人族の仮面を被る。 ひとり世界を敵とする、 日耳曼人の大胆さ、 健気さ、しかし此様な 悪の力の偏重が 調節されずに已まれよか。 いまは戦ふ時である、 戦嫌ひのわたしさへ 今日此頃は気が昂る。 世界の霊と身と骨が 一度に呻く時が来た。 大陣痛の時が来た、 生みの悩みの時が来た。 荒い血汐の洗礼で、 世界は更に新しい 知らぬ命を生むであろ。 其れがすべての人類に 真の平和を持ち来す 精神でなくて何んであろ。 どんな犠牲を払うても いまは戦ふ時である。

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