市中沙塵

与謝野晶子

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柳の青む頃ながら、 二月の風は殺気だち、 都の街の其処ここに 砂の毒瓦斯、砂の灰、 砂の地雷を噴き上げる。 よろよろとして、濠端に 山高帽を抑へたる 洋服づれの逃げ足の 操人形に似る可笑しさを、 外目に笑ふひまも無く、 さと我顔に吹きつくる 痛き飛礫に目ふさげば、 軽き眩暈に身は傾ぎ、 思はずにじむ涙さへ 砂の音して、あぢきなし。 二月の風の憎きかな、 乱るる裾は手に取れど、 髪も袂も鍋鶴の 灰色したる心地して、 砂の煙に羽羽たきぬ。

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