初秋の月

与謝野晶子

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世界はいと静かに 涼しき夜の帳に睡り、 黄金の魚一つ その差延べし手に光りぬ、 初秋の月。 紫水晶の海は 黒き大地に並び夢みて、 一つの波は彼方より 柔かき節奏に その上を馳せ来る。 波は次第に高まる、 麦の畝の風に逆ふ如く。 さて長き磯の上に 拡がり、拡がる、 しろがねの網として。 波は幾度もくり返し 奇しき光の魚を抱かんとす。 されど網を知らで、 常に高く彼処に光りぬ、 初秋の月。

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