すいつちよ(『晶子詩篇全集』収録・同題第2篇)

与謝野晶子

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青いすいつちよよ、 青い蚊帳に来て啼く青いすいつちよよ、 青いすいつちよの心では 恋せぬ昔の私と思ふらん、 寂しい寂しい私と思ふらん。 思へば和泉の国にて聞いたその声も 今聞く声も変り無し、 きさくな、世づかぬ小娘の青いすいつちよよ。 青いすいつちよよ、 青いすいつちよは、なぜ啼きさして黙るぞ。 わたしの外に聞き慣れぬ男の気息に羞らふか、 やつれの見えるわたしの頬、 ほつれたるわたしの髪をじつと見て、 虫の心も咽んだか。 青いすいつちよよ、 何も歎くな、驚くな、 わたしはすべて幸福だ、 いざ、今日此頃を語らはん、 来てとまれ、 わたしの左の白い腕を借すほどに。

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