颱風

与謝野晶子

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ああ颱風、 初秋の野を越えて 都を襲ふ颱風、 汝こそ逞しき大馬の群なれ。 黄銅の背、 鉄の脚、黄金の蹄、 眼に遠き太陽を掛け、 鬣に銀を散らしぬ。 火の鼻息に 水晶の雨を吹き、 暴く斜めに、 駆歩す、駆歩す。 ああ抑へがたき 天の大馬の群よ、 怒れるや、 戯れて遊ぶや。 大樹は逃れんとして、 地中の足を挙げ、 骨を挫き、手を折る。 空には飛ぶ鳥も無し。 人は怖れて戸を鎖せど、 世を裂く蹄の音に 屋根は崩れ、 家は船よりも揺れぬ。 ああ颱風、 人は汝によりて、 今こそ覚むれ、 気不精と沮喪とより。 こころよきかな、全身は 巨大なる象牙の 喇叭のここちして、 颱風と共に嘶く。

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